寒気の残るうちに、葉に先立って花を開き、清冽な香を放つ。百花に先がけて咲くことから、気高さ・先駆の象徴とされた。中国渡来の文人趣味とともに尊ばれ、茶席では早春の床に香り高く据えられる。[通]
奈良時代、ただ「花」といえば梅を指した。しかもそれは白梅である。平安になって「花」の座は桜へ移ったといわれるが、その移り方は通説ほど単純ではない。白梅・紅梅・桜という三者の関係を、渡来の時期、和歌の実数、宮城の庭木の植え替えという三つの角度からたどると、日本文化が大陸のものを受け入れ、やがて自前の感覚を持つに至る過程が、そのまま見えてくる。
……
この続き(およそ4,700字)は、会員の方がお読みになれます。
史料の読み比べ、説の一覧、典拠の明示まで。月500円から。
伊藤敏子ほか『新版 茶花大事典』淡交社/「はじまりの茶の湯学」茶花一覧資料