水辺に青紫の花を開く。伊勢物語の東下り「かきつばた」の折句(から衣…)で名高く、尾形光琳の燕子花図屏風にも描かれた。古典と絵画の記憶を負う、初夏の水辺の花。[通]
「いずれ あやめ かきつばた」——どちらも優れて選びかねるという意のこの語が示すとおり、あやめの仲間はよく似た花を咲かせる。だがその似た三種のなかで、かきつばたは華やかさで花菖蒲に譲り、そのかわり品格において勝ると古来評されてきた。画材や工芸の意匠に選ばれ続けたのはそのためである。名の由来、当てられた漢字、そして歌枕としての来歴——この花はどの角度から見ても、人の手が幾重にも意味を重ねてきた花である。
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伊藤敏子ほか『新版 茶花大事典』淡交社/「はじまりの茶の湯学」茶花一覧資料