利休が長次郎に作らせた、轆轤を使わず手で捏ね箆で削り低温で焼く茶碗。わずかな歪みや手のあとが残る。黒一色に余分を削ぎ落とした黒楽は、侘びの思想を器そのものに結晶させた。見立てから創造へ——茶の湯のためだけに道具を新たに作る段階に踏み込んだ画期。大黒・無一物・俊寛などが代表作。[確:現存作]
樂茶碗は、ほかの焼物とは成り立ちが違う。多くの焼物が産地の名で呼ばれ、その土地の多くの手によって発展してきたのに対し、樂焼は「樂家の当主」という個人の作品の連続によって数百年続いてきた。産地ではなく、家である。そして生まれたときには名がなかった。名がなかったということは、前例がなかったということである。
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樂美術館編『樂歴代』淡交社/茶碗物語資料