一人ずつ、確かめられることと伝わっていることと監修者の読みを 分けて書いています。番号は作った順で、時代順ではありません。
価値を、創造した人
そこらの竹にも、焼いたばかりの茶碗にも、価値は認められていなかった。無いところに、価値そのものを生みだした人。
わびこの人をあらわすもの 黒樂茶碗
自由な型を、持っていた人
型をこわした人だと思われている。じつは逆で、型を徹底して守った人。その型が、師と同じことをしない、という型だった。
へうげこの人をあらわすもの 十文字茶碗
美を、世の中に置いた人
茶室の中だけの話にしなかった。明るくて広い茶をつくり、城と庭を建て、道具の格の決め方まで変えた人。
綺麗さびこの人をあらわすもの 飛鳥川
利休の茶を、今日まで残した人
型を体得した人は、型の中で自由になれる。大切なものを捉え、貫き、時代に合わせつづけた。
体得この人をあらわすもの 茶杓「けつりそこなひ」
矛盾を、楽しんだ人
矛盾は、片付ける問題ではない。それが世界そのものであり、茶の湯そのものである。珠光は、そこを楽しんでみせた。
冷え枯れこの人をあらわすもの 『心の文』
茶の湯を、日本の文化にした人
抹茶も道具も、唐物ばかりだった。そこへ和歌を入れた。外から来たものを飾る場が、日本の文化になった。
分別この人をあらわすもの 定家の小倉色紙
茶の湯を、最高の誉にした人
茶入ひとつが、領地一国より重くなった。茶会を開けることが、生涯の誇りになった。新しい美ではなく、重さのほうを変えた人である。
名物この人をあらわすもの 九十九茄子
茶の湯を、天下に見せた人
黄金の茶室も、2畳の待庵も、北野の大茶湯も、ぜんぶ見せるための道具である。相手が違うだけだった。
天下一この人をあらわすもの 黄金の茶室
飾ることの、文法を作った人
何をどこへ置くかに、決まりを作った。道具に序列と作法が生まれたのは、ここである。
東山この人をあらわすもの 東求堂同仁斎
末の世を、茶で救おうとした人
茶の湯を伝えたのではない。末法── 世はもう終わりだと誰もが言っていた時代に、生きるほうの薬を差し出した。
養生この人をあらわすもの 『喫茶養生記』
茶の湯を、書いて守った人
「茶湯者は無能なるが一能なり」── 何かに長けてしまえば、そちらへ偏る。誰をも迎えるには、何者でもない平らな状態でいるほかない。
侘び数寄この人をあらわすもの 『山上宗二記』
絶やさないために、分けた人
利休は秀吉ひとりに仕えて死んだ。宗二も織部も、仕えた相手に殺された。宗旦はどこにも仕えず、3人の子を別々の家へ出した。
乞食宗旦この人をあらわすもの 今日庵
終わりに、名前をつけた人
客を見送れば、茶事は済む。それまでの茶書は、そこで筆を置いていた。直弼は、戻ってひとり座る時間まで書いた。独座観念という。
一期一会この人をあらわすもの 『茶湯一会集』
栄西が末法の世に茶を差し出し、そのおよそ三百年後に義政と同朋衆が飾ることに決まりを作り、珠光が矛盾を楽しみ、紹鴎が茶の湯を日本のものにした。そこへ信長が来て、茶の湯の重さを決め、秀吉がそれを天下に見せた。
その上で、利休が価値を創り、宗二がそれを書き留め、織部が型を立て、遠州が世の中に置き、三斎が残し、宗旦が、潰れない形にした。それから二百年、直弼が、一会の終わりに名前をつけた。
十三人ならべると、茶の湯が一本の線になる。
この七人には、本人がやっていないことが名前だけで残っている。 どれも有名な話で、どれも同時代の史料に裏づけが無い。
だからこの図鑑は、確かめられることと伝わっていることと 監修者の読みを、混ぜずに書いています。
◎ はっきり確かめられること
○ そう伝わっていること
読み 監修者の解釈。史実とは分けています
この三つを混ぜないように書いています。茶の湯の話には、 あとの時代につくられた物語がたくさん混じっているからです。
監修・武井宗道 はじまりの茶の湯学